ほんのよこみち なブログ

元不登校の高校生と、ひきこもり→就労準備中の子を持つシングルマザーが、このくにで生きることを考えながら、本と好きなことを語ります。

『ライ麦畑でつかまえて』を人生初読して考えた、発達障害に限らない、人間の面倒くささ。

ほんのよこみちです。

51歳にして、人生初、『ライ麦畑でつかまえて (白水Uブックス)』を読みました。

 

ライ麦畑でつかまえて (白水Uブックス)
 

 

いやあ~、もう、面倒くさい子ですね、ホールデン・コールフィールドという子は!

読みやすい文章なのに、延々とホールデンの愚痴が並んでいるという、この苦痛!

若い頃に読んでたら、絶対途中で投げ出していました^^;

 

だって愚痴ってばかりのわりに、ホールデンって愛されてるじゃん?

そもそも、寮生活をしてまで学校に行かせてくれる親……なんて、日本の地方出身の女子からしてみたら、めっちゃいい親ですよ?

自宅通学が最低条件……という現実に、私も含め、多くの友人が進路志望を変更しましたもん。

なので、10代の頃に読んでたら、甘ったれんじゃねえ! って、叫んでたと思う。

 

でも、ホールデンの親世代になって読んでみると。

この、どこかでよく見たことがあるような子の親をやるのは、さぞかし大変だろううなあ、とまずホールデンの親に同情しました。

ライ麦』は発達障害の子の話である、というのは、読む前から耳にしていましたが、読んでみると「うちの子もこんな感じだったかも……」

発達障害であれば遺伝性ですから、この面倒くさい思考パターンも、この子の所為ではない……。

 

読みながら、ホールデンが悪態をつく相手の子に対し、

「ごめんね、悪気があってそういう口のきき方をするんじゃなくて、この子は発達障害だから、ついそういう口のきき方をしてしまうの。

嫌な思いをさせちゃったね、許してね」

と謝って回る私がいました。

なぜ(・・?

母親だからさ!

 

でも、発達障害は遺伝性なので、つまりは私にもこういう面倒くささってあるんだよね、そうだね、今も面倒くさいけど、若い頃は更に面倒くさかったよね、友だちって神さまだよね、……等々、ドツボにもはまり(~_~;)

これは我が身、と考えたら、さらに読むのが辛くなりました。

 

やっぱり人間ですからね。

自分の嫌な部分を突き付けられて、平然としていられるほど、できた人間ではないので。

でも、あっさり退却してしまうのは、母親がすたるしな。

 

そう思いつつ読んでいたら、だんだんホールデンが可愛くなってくるじゃないですか。

不器用で、ヘタレで、寂しがり屋で、他者を貶めるほどに自己肯定感の低い、弱くて小さな子ども。

かまってほしくて自己アピールするけど、相手に求めるのが自分の人格全肯定だから、そんなの他者に望むべくもない……。

 

ホールデンが未就学児だったら、良かったんですけどね。

あいにく彼は成長してしまった。

 

自己肯定感の低さには、学業の失敗もあるわけで、これは学校制度の在り方そのものの問題性もありますよね。

まんべんなく好成績を求められるエリート養成所という側面だけで、いいのか。

学業エリートではない子どもたちにも、それぞれの能力に合った学びと、幸福な人生を送る権利はあるのではないのか。

これは本当になんとかしたい問題なのですが、発表から半世紀過ぎても、同じ問題に直面する若者がいるこの現実!

オンライン授業だったら、ホールデンももう少し気楽だったかもしれませんね。

 

というように、私は発達障害ホールデンとして最後まで読んでしまいましたが。

実際、読み終わってから日常生活を送っていると、今度はいろんな人の愚痴に焦点が集まるようになってしまいました。

なんか皆さん、他人の言動を愚痴ってばかりじゃないですかね?

 

これは、思っていた以上に発達障害の人が多いのか?

それとも、ホールデンは別に発達障害じゃなくて、『ライ麦畑でつかまえて (白水Uブックス)』も普通の若者の苦悩話で、人間本来の姿が、非常に面倒くさいほどに愚痴っぽいだけなのか。

 

ひとつ言えることは、こんな面倒くさくて鬱陶しいホールデンの一人称視点で、物語を書ききったサリンジャーってすごい、ということでしょうか。

単純に、心が折れなかったことに敬意を表したい。

それも映画を観るような文章で、読みやすいし、読みやすいって小説に対する感想としては、必ずしも誉め言葉にはならないとわかっているけど、これで文章が難解だったら、心折れてる、読者が。もっと。今以上に。

 

小説ってやっぱりすごいなあと、『ライ麦』を読んで思いました。

作家の文章力って、すごいね。

そこにいるうちの子みたいに、ホールデンを描いちゃうんだもんな。

だから母ちゃん、打ちのめされちゃったよ。

 

賛否分かれる『ライ麦』ですが、読んどいて損はないかなあ、というのが正直なところです。

辛くても、自分がイライラしたときに「あ、ホールデンかも」って思うことで冷静になれるなら、人生の肥やしになってます。

また他人の愚痴も「仕方ないね」でスルー出来るなら、イライラせずに済むしね。

ま、そんなにうまくいくなら、誰も悩んだりせんわい! はい、そうですね。その通り。

 

あ、私、ずっとホールデンを「面倒くさい子」扱いしてますけど、それはもう、彼に感情移入できないほどなんやかんや経験したからで、感情移入できる人は、どうぞして下さいm(_ _)m

それは、若者の特権です。

若いうちにしかできないことは、どんどんやりましょう。

感情移入するって、めちゃ大事なことやし、それが出来るから、他者の痛みも想像できる。

偉そうにしている大人たちも、大概面倒くさい子どもだったんだって思えば、いや、今や面倒くさい大人かもしんないけど、世の中ホールデンばっかりじゃん! って思った時点で、あなたも私もホールデンだから(^▽^;)

 

ライ麦』ってホントすごいですね。

最後までちゃんと読めて良かったです。

ありがとうございました。m(_ _)m