『台湾の歴史と文化』を読んで、その複雑な歴史と、日本と言う立場を考える
ほんのよこみちです。
前回『八九六四 「天安門事件」は再び起きるか』を読んだ後、台湾のオレンジ学生運動が気になり、この本⤵を読みました。
地理的・歴史的に、日本人から見た台湾を描く
この本は、台湾史の教科書というより、地理的・歴史的側面から、且つ日本人たちが見た台湾の姿を描く……という構成の本でした。
この本を読むまで、実は、台湾の東半分は山岳地帯ということも知らずにいた私……💧
台湾が予想以上に多民族社会で、漢民族が移住してくるより前から、東南アジア系の先住民族がいて……なんてのも、この本ではじめて知りました。
え? 知らないのは私だけ??
先住民族の人たちは文字を持たなかったため、歴史として残るのは、オランダが占拠した17世紀からなんですね。
そのあと、鄭和が来て、清朝が攻めてきて、日本に割譲されて、国民党が来て、1987年まで戒厳令が続く……。
ちょっと、大変な歴史ではないですか?
常に、よそから軍事力持った連中がやってきて、移民もばかすかやってきて、そのたびに元からいた人たちは、すみっこに追いやられたり、服従を耐え忍んだりして、生き延びてきた……。
日本人である私が言うのもなんですが、あんまりではないですか?
そして今も、中華人民共和国との間の問題があり、国連に加盟することすらできない。
地理的に、とても微妙な位置にあり、海運の要衝でもあったことから、こんな過酷な運命に翻弄されてきた台湾。
この本では、そんな台湾の日本統治の時代に、日本から赴任してきた教育者たちが、台湾の歴史や文化を守ろうと活動しながら、現地の人々と交流を深めていく姿も描いています。
というと、ちょっと「日本人いいね!」論調かよ……という気もするんですがね。
ま、そういう趣も、無きにしも非ず……ではあります。
日本統治時代の台湾の日本人教師たち(一例)
この本を読み進めていると、何人かの日本人教師たちが、主人公のように描かれていることに気づきます。
彼らと、現地台湾人の若者たちによって、草の根活動的につながっていく、台湾原住民族の文化・風習・言語の保存プロジェクト……。
でも、日本統治時代に、現地の民俗文化を保護って、ちょっと植民地政策のイメージとは違うなあという気がしました。
しかも1930年代。
少々牧歌的な雰囲気さえ感じます。
ひょっとして、台湾が下関条約で割譲されたことや、地理的な要因があったんですかね?
つまり、日本政府として、台湾は切羽詰まった場所じゃなかった?
切羽詰まった場所がどこかと言えば、中国とか東南アジアとかを思い浮かべます。
激戦地と言えば、南アジアもそうですね。
でも、台湾にはそこまでの緊迫感がなかった。
大陸とは離れた島で、19世紀末に割譲されてたし、植民地経営としてのインフラ整備も進んでいた。
だから、人員配置にしても、そこまで重要視されていなかった?
当時、台湾で学校の先生をやるような人は、本土での出世コースから外れた人たちだったようです。
政治権力闘争には興味がないけれど、学問は好き、というタイプ?
どうせ出世が望めないから。
台湾で、現地の民俗学研究に没頭して、台湾の人々と友好を深めていった方が、人間らしく生きられる。
そういえば、同じような現象を『八九六四 「天安門事件」は再び起きるか』でも読みました。
天安門に行く学生たちを、本当に親身になって考えていたのは、党での出世コースから外れてしまった先生たちだ、と。
出世って、なんなんだろうな、と考えてしまいます。
人間らしさと引き換えじゃなきゃ、手に入らないものなんでしょうか。
私もとっくに出世コースから外れてますが、お偉いさんの顔色をうかがって辟易するくらいなら、本読んでた方がいいしな。
どうせ一度しかない人生だから。
こういう草の根活動的な民俗学研究者によって、台湾の文化が少しでも守られたのなら、本当にありがたいことだと思います。
それで、まあ、当時の日本がいろいろやってしまったことが、チャラになるわけじゃないんですが。
文化は歴史遺産でもありますからね。
台湾史から学ぶ、多民族国家の政治
台湾はありがたいことに、親日国(地域)です。
でもそれは、日本統治時代の植民地政策が良かったからではなく、国民党の軍事政権がひどかったから。
戦後40年以上、戒厳令を続けるような政権が続いたために、相対的に日本を再評価していただいたというだけの話。
日本だって、山岳地帯の先住民族を虐殺したり、日本語を強要したり、いろいろやってます。
90年代くらいまで、台湾の高齢者で日本語の堪能な方は、結構いらっしゃったようですし。
『幽幻道士』のテーマソングは、鳩ポッポですしね。
ああ、話がそれました。
つまり、力で押さえつける政策は、批判を生むよということですね。
日本の植民地から解放されて喜んだのもつかの間、後から入ってきた国民党軍の圧政に苦しむ時代が続きました。
軍事政権時代は、中国共産党政権と大差ないくらい、自由もなく、命の安全もなかった。
故に台湾人は、民主化と選挙のありがたみを、嫌と言うほど知っている。
李登輝氏以後の総統は、すべて選挙で選ばれてますが、日本とは関心の高さが違います。
仮に、蒋介石の軍事政権が民衆に優しいものだったら、今の台湾総統は蔡英文氏じゃなかったかもしれません。
今も、蒋介石の身内が、政権を握っていたかもしれません。
だから、独裁者になりたい方々は、我欲を抑え、民衆の声に耳を傾けることですよ。
民が飢えたり苦しんだりしない社会を。
誰もが公然と差別されることのない社会を。
諸外国と対話して、友好関係を築ける社会を。
歴史から学び、これからのビジョンを描ける社会を。
最低限、これらを意識してつくり続けていけたら、長期独裁政権も夢ではないかもですよ?
我欲が飛び出て、民を虐げることが慢性化したら、覚悟を決めることですね。
仮に民が虐げられることに慣れ切ってしまって、内政的に引きずりおろされることがなくとも、国力は絶対的に衰えていきますから。
荒野の中の大将を気取ったって、みっともないだけじゃん。
我が国の国力も、ここ30年で衰えています。
さあ、どうしますかね。
ということで
本書には、台湾の街並みを伝える旅行記的な表現も一部あるんですが、そこはやっぱり現地に行ってみたかったなあ……と、文章の限界を感じました。
でも、もっと深く台湾のことを知りたくなったので、うまくこの本にのせられている気がします……^^;
巻末に参考文献がたくさん載っているので、知りたい事柄から深めていくことも可能。
結構、この参考文献の紹介が丁寧なので、初心者にはありがたい限りです。
本音を言えば「知りたいことが多すぎて、金がまわらん💧」なんですがね。
同じアジア人同士、不幸な過去はありましたけど、もっともっと隣人として知りたい台湾。
仲良くしていけたら幸いですね。
ありがとうございました。m(_ _)m