ほんのよこみち なブログ

元不登校の高校生と、ひきこもり→就労準備中の子を持つシングルマザーが、このくにで生きることを考えながら、本と好きなことを語ります。

オーウェルの『動物農場』〔新訳版〕を読みました

GWだというのに風邪が治らず、申し込んでた講座もキャンセルして寝込んでいる、まぬけなほんのよこみちです。

で、横になりながら読んだのが、ジョージ・オーウェルの『動物農場』。

昨年、話題になった本ですね。

読んでみて、おおっ、『銀英伝』につながる内容じゃないですか⁉

先日のノイエ第4話「不敗の魔術師」での、ヤン・タイロンのセリフを思い出しました。

-------民衆がラクをしたがるから、独裁者が生まれる。
honno-yokomichi.hatenablog.com

 

 

この本は、お伽話です。

人間の専横に反旗を翻した動物たちが、動物たちのための農場契約に乗り出します。

ですが、その過程で様々な落とし穴があり、道のりは平坦ではなく、どんどんおかしくなっていきます。

 

 

オーウェルは、この作品をソ連スターリンに対する警鐘として書かれたようで、確かにそう読めばそういうことです。

しかし、ソ連が崩壊して30年。

それでもこのお話が親近感を持って読めてしまうのは、民主主義から独裁者が生まれる、その過程が描かれている、とも読めるからでしょう。

翻訳をされた山形浩生さんも、そういうふうに読まれているようです。

ジョージ・オーウェルは1950年に亡くなられているので、ペレストロイカソ連なんて知りませんしね。

 

 

で、前述の『銀英伝』のセリフです。

 

 

このお話には、様々な農場の動物たちが出てきます。

何か思うところがあっても、達観しているふうを装って、何も言わないロバのベンジャミン。

リーダーを全肯定して、黙々と働く、馬車馬のボクサー。

わかりやすい言葉で、現状称賛して回るヒツジたち。

そして、他の動物たちの上に君臨しようとするブタたちと、親衛隊のイヌたち。

これら動物たちに似た人って、結構身近にいたりしますよね。

 

 

私自身は、こんな動物農場で人生を送りたくはないです。

だから、なんとかあがきたい。

どうせ、ちょっとあがいたってかわらないよ、と達観したくないです。

バブル期に、日本は世界で最も共産主義が成功した国、なんて揶揄されてましたけど。

一党独裁政治+国民の平等感+経済発展……という図式で)

だからこそ、驕る平家は久しからず、です。

 

 

この本は、お話だけでなく、オーウェルによる序文も読まれることをお勧めします。

序文には、表現の自由言論の自由に対する自主規制的な事柄が、恨み節全開で書かれています。

表現の自由言論の自由も、たとえ己の主張と相反する意見であっても、制限することなく、尊重しなければならない。

訳者の山形さんの、これらに触れた箇所を読んでいて、誹謗中傷を全否定したくなるのも、言論の自由の侵害? と自信がなくなってきました。

強者を非難する権利は、ある。

でも、非難と誹謗中傷の違いは? 名誉棄損との差は?

民主主義ってわかりやすいものではないですね。

だから、面倒くさいから、そういうことは誰かに決めてもらった方がラク、という気持ちもわからんではないですが、その先に自分の明るい未来があるとは限らないしなあ。

 

 

そういうことを考えさせてくれる、この本は非常に良い本です。

 

動物農場〔新訳版〕 (ハヤカワepi文庫)