ほんのよこみち なブログ

元不登校の高校生と、ひきこもり→就労準備中の子を持つシングルマザーが、このくにで生きることを考えながら、本と好きなことを語ります。

【社会】『ばっちゃん~子どもたちの居場所。広島のマザー・テレサ~』を読む

こんにちは、ほんのよこみちです。

2017年1月のNHKスペシャルを、あなたはごらんになられたでしょうか。

この本は、NHKディレクターによる、「ばっちゃん」こと中本忠子さんの保護司としての活動……にとどまらない、子どもたちに対する包容力のすごさを記録した、でもきっと記録しきれていないだろうなとうかがわせるくらい、すごい「ばっちゃん」のことを記した、本です!

ぜひ、読むべし‼

ばっちゃん ~子どもたちの居場所。広島のマザー・テレサ~

 

 

あ……、終わってしまうじゃん!

 

 

この本は、定期的に読むべき本だなあと、手に取って思いました。

NHKスペシャルを見て、中本さんのすごさに心を打たれ、こんな人になれたらいいなと思っても。

私も弱い人間なので、すぐに自分の弱さを全肯定して低きに流れたり、納得できない人を排除しようとする意識が働いたり、駄目さが出てきてしまいます。

排除の論理って、誰も幸せにしないのにね。

中本さんの「ばっちゃん」のやり方を読むと、心の中の曇りが、かこーんと晴れていきます。

うだうだ論理とかなんとか言ってないで、ご飯を食べさせりゃいいのよ、を広島弁で言われているような気持になります。

 

 

「ばっちゃん」が関わっている子どもたちは、お腹を空かせて万引きなどの犯罪を犯してしまう子たちです。

親が育児放棄してたり、様々な環境要因で親とうまくいかない、家に帰れない子たち。そういう子たちに、「ばっちゃん」はご飯を食べさせています。

「ばっちゃん」の家に通う子は、友だちを連れ、兄弟を連れ、朝も夜中も関係なく、「ばっちゃん」の家でご飯を食べさせてもらいます。

でも、嫌な顔一つせず、「ばっちゃん」は子どもたちを受け入れます。

 

 

お腹を空かせているから、子どもたちは非行に走る。

だから、ご飯を食べさせる。

 

 

「ばっちゃん」の基本理念は、これ↑だそうです。

え? 本当~? と、私も思ったのですが、そもそも空腹というのは生存の危機ですよね。

大人で正常な判断ができるなら、まだ対応の仕様がありますが、子どもで、お金がなくて、親が自分に無関心で、それでもお腹が減っている場合、放っておいたら死ぬわけですから、何をしてでも生きたいと思う……そのことを責められるでしょうか。

親が悪い、で、周囲が無関心+排除の論理を働かせたら、その子に逃げ場はなくなります。

どの子も、親を選んで生まれてくることなんかできないのに……。

 

 

今、学校とかでも、いじめをしたら退学とか、停学とか、いろいろ排除の方向に向かってますが、それで何かが解決するのだろうか……という気がします。

確かに、いじめられた子の安全と利益は守るべきだと思う。

でも、いじめた子だって傷ついているわけですから、その子に将来にわたるハンデを負わせ、社会の枠からはじき出してしまったら、結局、人生をやり直すこともできず、居場所もなく、犯罪に手を染めざるを得なくなるわけです。

短絡的?

この、失敗を許さない現代日本で、再チャレンジがどれだけ大変か、賢い方はみなさんわかってますよね。

あ、このくだりは、この本とは関係のない、私の私見です。

 

 

この本の後半で、排除する社会の危険性を考える頁を設けてらっしゃるのですが、そこに挙げられていたYahoo知恵袋の回答に、私も心を動かされてしまったので、リンクを貼ります。

この世は弱肉強食ではない - え~っと、、、よくある勘違いなんで... - Yahoo!知恵袋

 

 

誰が優れているとかどうとか、そういうのはどうでもよくて、人間という種が生き残るための戦略として、我々は社会を形成することを選んだのだし、将来、世界の環境がどう変わるかわからないから、いろんなタイプの人を包容することで、種としての人類が生き残る可能性を増やす。それが、我々の戦略なんだ、と。

生物多様性というやつですね。

だから、本当はあらゆる組織で、多様な経験・能力の持ち主が混在している方が、いいような気がします。

会社も、大卒ばっかりじゃなくて、技術系の高卒も採用するとか。

実は、技術系パートのおばちゃんが、鋭い意見を言ったりするんですよ、マジで。

いらない人間なんて、本当はいないんです。

 

 

とはいえ、子どもって面倒くさいと思うんですよ。あと、大人子どもも。

どこまで自分を受け入れてもらえるか試してくるし、思うとおりにならなければすぐに攻撃してくる、もしくは拒絶してくる。

は? 何様? とこちらも思ってしまうし、じゃあ好きにすれば? と排除したくなる。

弱いですね~。器ちっちゃいですね~。包容力ゼロですね~。

 

 

この本を読んでいると、結局は自分の人間力が問われているんだな、ということに気づきます。

子どもは鋭いですから、大人の都合とかごまかしとかが一切通用しません。

「ばっちゃん」は全力で、心の底から、子どもたちを守ろうとする。

その「技」は、多分、いろんな専門家が言っていることの集大成……でもあると思いますが、それらの前に、ご飯を食べさせる。

 

 

「居場所を作るにはどうしたらいいか?」

「誰もが排除されずに暮らせるにはどうしたらいいのか?」

著者であるNHKディレクター・伊集院要さんの持ち帰られた課題を、私も持ち続けて生きていきます。