ほんのよこみち なブログ

元不登校の高校生と、ひきこもり→就労準備中の子を持つシングルマザーが、このくにで生きることを考えながら、本と好きなことを語ります。

【本屋】『那覇の市場で古本屋 ひょっこり始めた〈ウララ〉の日々』を読む

沖縄の那覇で「市場の古本屋ウララ」を経営されている、宇田智子さんの本屋エッセイです。

先週、ビブリオバトルに行った図書館で、つい借りて帰ってしまいました。

 

 

宇田さんは大学卒業後、ジュンク堂書店に入社され、池袋本店で人文書を担当、のち那覇店に異動され、独立して古本屋をされている方です。

ジュンク堂時代に「沖縄県産本」の魅力を感じられ、今も小さな古本屋ながら、「沖縄本」に力を入れた品ぞろえで、お店を人気店にされているんですね。

この本には、そんな「市場の古本屋ウララ」開店前後の日々や、沖縄の人々とのゆったりした優しいふれあいの日々が描かれています。

 

 

沖縄県産本」。

実は私、以前、宇田さんのトークイベント(というか、某大学の公開講座にゲスト講師としていらしてた)に参加したことがあるんですね。

そのときすごくショックだったのが、「沖縄本」というワードです。

地域の出版社が地域のことについて出す本。

沖縄は、本土とは違う独自の文化・歴史がありますので、東京の出版社が出す本ではニーズをまかないきれない。だから、自分たちで作る。出す。

もともとニーズがあるわけですから、作って店頭に並べれば売れるわけです。

目の付け所が違うなあ……と思いました。

 

 

私も地方出身ですので、郷里に地元の歴史や民俗を扱うような出版社があることは知っています。

でも、なんか地域の出版社って、東京の大手出版社と比べてしまって、下位な感じにとらえてた気がします。

東京コンプレックスというヤツですね。

沖縄の人たちは、そういう地方の卑屈さがないというか、やっぱり島津家が来るまでは独立国でしたので、本土の「ほとんど名もなき地方」みたいに自己肯定感が低くはないのでしょう。

なんか羨ましくなります。

 

 

とはいえ、本屋さんはやっぱり大変危機的な業界ですし、女性がひとりで独立されるのも大変です。

宇田さんが、経営才覚に富んだしゃきしゃきスーパーレディかというと、どちらかというとおっとりした感じの優しい女性のように、文章からは伺えます。

もともと書店員をされていたので人脈があり、独立に際しては、いろいろな方からの援助を受けられているようにもお見受けします。

何が、彼女の成功を導いているのか。

自分をガンガン前に出すのではなく、芯はありつつも、いろいろな人のありようを受け止める懐の深さ。

それが、私のような凡人と宇田さんとの違いではないかと思ってしまいました。

 

 

それでふと思い出したのが、倉敷・蟲文庫田中美穂さん。

わたしの小さな古本屋 (ちくま文庫)

苔という独自ジャンルを持ちつつ、お店に来たお子さんに「ここ、おばあちゃんちかもしれない」と言わせるような、包容力のある空間を作り出せる懐の深さ。

 

 

女性に限らず、独立してお店を持ちたいなら、ニーズのある得意ジャンルを嗅ぎ分ける才覚のみならず、芯は持ちつつも、他人の意見を聞き、自分とは考え方の違う人も包容するような、器の大きい人間にならないと、難しいのかもしれません。

そういうことを、この本を読みながら考えていました。

 

 

なんて、そんな堅苦しい本ではありません。

宇田さんの文章はほっこりしていて読みやすいので、疲れたときに読むエッセイとしてもいいです。

読んでいて、沖縄に行きたくなりました! 

……あ~~ハブさえいなければ!

 

 

そう、この本の中に、ハブという文字は全然出て来ないんですっ!

それは、那覇の街中や宇田さんのご近所にはハブがいないのか、それとも当たり前にいすぎていちいち書くほどのことでもないのか、はたまた実は宇田さんは蛇がお好きでハブも全然平気なのか、そういう蛇恐怖症(蛇という漢字もカタカナでヘビと書いても頭の中でへびとつぶやいても怖い!)が一番気になることは、書かれていません。

沖縄のハブは冬も冬眠しないんだよう~、一年中活動してるんだよう~。

ま、20数年前に社員旅行で沖縄行ったときも、ハブ園でしかハブを見てないし、そもそもハブがパニック映画の如き頻度で出現していたら、そりゃ今ごろ大問題になって、沖縄県のみならず、さすがの政府も動いてるだろうし、米軍も暴走してるでしょう。

 

 

沖縄に行く、という夢も与えてくれた本です。

 那覇の市場で古本屋―ひょっこり始めた〈ウララ〉の日々