孤独について考えていて『孤独の価値』を読んでみた。
ほんのよこみちです。
このところ「孤独」というワードが、頭の周りをちらちら回っているので、読んでみました。
森博嗣さんの『孤独の価値』です。
う~ん。
やっぱりこの本は、小説家の書くエッセイ本ですね。
文章というものは、それを書く人間の立場や主観を離れることはできない。
どんなに知的な書き手でも、無意識的に、自己弁護するような文章になってしまう。
そういうようなことを、あらためて感じた本でした。
小説家による「孤独」エッセイ本ですから、心理学的な本ではありません。
森博嗣氏の自説が、書かれている本です。
なので、森氏を知る本として読むと、いいかもしれません。
この本は、人間関係を整理した小説家による、ある意味ひきこもりのすすめみたいな側面があるので、全部を肯定的に信奉してしまうと、辛い部分があるかもしれません。
生物としての孤独は、死を連想する、というように著者も書いてますけど、人間は弱い生き物ですから、世界にただひとりでは生きてゆけません。
でもまあ、原始時代じゃないんだから、そこまで集団にしがみつかなくても生きていけるよ、というようなのが、この本の趣旨だと思います。
女子がグループをつくりたがるのは、単独行動だと、暴漢に襲われたときに対抗できないから、というのもありますけどね。
でもまあ、同調圧力って息苦しいですし、言葉の暴漢がグループ内にあらわれないとも限りませんし。
どっちにしたって、難しいんですよね。
私などは、もう孤独が苦じゃないですけど、若いときはやっぱり辛かったです。
みんなが教室に残っていると、用もないのに、自分も残っていたりいて。
孤独をアートや文学に昇華しようっていうのも、昔から言われてましたけどね。
書くことで、自分の孤独とさらに向き合うことになり、絶望する場合ってあるじゃないですか。
若者は人生経験が少ない分、絶望に向き合う術を持っていません。
周囲に支える人間っていうのが、やっぱりいた方がいいんですよね。
この本のラストで、著者も家族に対する感謝を述べてらっしゃいますが、孤独の価値を感じるために、誰かは必要なわけです。
自分が自由に幸福を追求できる、そんな環境を見守ってくれる誰かが。
なので、そんな誰かがいない人にとっては、この本は辛い本になってしまうかもしれません。
例えば、親に虐待された子どもたちの、自分が存在してもいいという肯定感を感じられない孤独。
経済的貧困から逃れられない孤独。
家族がひきこもりになったときの孤独。
自分の死を覚悟したときの孤独。
孤独にも、いろいろありますから。
個人的には、この本って「人類と孤独」みたいな、歴史と思想の本として出してもらったら、もっと面白かったんじゃないかと思ってます。
メンタル系心理学の新書、じゃなくて。
メンタル本って、みんな自分を癒してもらおうと思って読むから、著者が自分の予想した軌道を外れると……しんどいんですよ。
生き方は人それぞれだから、自分一人で好きなことに打ち込む生き方があっても、全然かまわないと思います。
ただまあ……家族は孤独だろうなあ……。
この本の読者対象はどの辺だろう、と考えると、やっぱり中高生以上の独身の方ですかね。
なんせ、感情について表現するのに、微分が登場しますから(^_^;)
さすが理系でいらっしゃる。
てか、高校数学なんて、もうすっかり忘れてましたよ。
「数学、ちゃんと勉強しないと」って……子どもに言えないわ(^▽^;)
ということで、孤独について考えた読書でした。
この本も積読タワー本だったので、またちょっとタワーが低くなったぞ(^^;
本を読む時期もご縁なので、今読めたことがラッキーだったと思うことにします。
ありがとうございました。m(_ _)m