出口治明氏の『「働き方」の教科書』を読んで考える、大企業と中小企業の働き方の差と非正規で生きるということ。
ほんのよこみちです。
ずっと読みたかった出口治明氏の本を読みました。
『「働き方の教科書 人生と仕事とお金の基本』です。
ずっと読みたかった……と言いつつ、買って2年ほど積んでたのは、どこの誰でしょうね(^^;
2年前、個人的に結構メンタルどん底だったんで、ビジネス本とかメンタル本とか買いまくってたんですよ~。
そのくせ読む時間がなくて……というか読むペースがとろくて、積んでたバージョンですね。
出口治明氏はライフネット生命の創業者で、今は取締役を引いて立命館アジア太平洋大学の学長をされています。
大変な読書家でいらっしゃるので、ホント気になっていたんですよ~。
生きるヒント的に「本を読むこと」「人に会うこと」「旅をすること」をインタビュー記事などでもあげられてましたし。
絶対話が合う! って、勝手に思ってました。
で。
- 大企業と中小企業との職場環境の違いに愕然とする。
- 日本の高度成長期は、偶然の産物に過ぎない。
- 院卒の時代が来てる。
- やっぱり文章は、書いた人間の立場から逃れられない。
- 「働き方の教科書」は現代の社会問題を考える教科書だった。
大企業と中小企業との職場環境の違いに愕然とする。
出口氏はもともと日本生命に就職された方なので、大企業一筋の方だったんですね。
この本も、大企業のサラリーマンの働き方を書いてらっしゃいます。
う~ん。
大企業って、働いてるだけでそんなに能力上がるのか?
読んでて率直に、そう思ってしまいました。
私は新卒入社も地方の中小企業で、まあ田舎の女子大生の就職先としては、標準的な会社に就職しました。
ですが、当時の結婚・出産退社の壁を越えられず、以後はパート・アルバイトを繰り返して……という人生を送っています。
なので、出口氏が書いているような「50歳だったら当然できること」が、全然できません。
人脈もないし、書類を書くのも調べながらだし、そもそも頭を使ってじっくり考えてやるような仕事なんて、してきていない!
これはね~、不味い状況ですよね。
私はパート歴の方が長いくらいなので、余計にそうですが、身近な中小企業の社員さんたちを見ても、どちらかというと職人気質な人が多くて、デキるビジネスマンという感じの人は少数派です。
中小企業の社員で、取引先も中小企業だから、問題ない。
なんですけどね。
中小企業の、さらに非正規労働者の立場になると、社会人として身につけるべきノウハウからは、さらに遠いわけで。
若いときはともかく、そのまま年を取っていったら、再チャレンジしようにも、どうにもならないくらいの溝ができてるってことなんだなあ。
単に、年齢がネックになるというだけではなくて。
企業側が「当然身につけてるよね」と思うような常識にすら、出会うチャンスがなかったりするわけで。
今の、日本のこの労働格差って、単に個人の問題じゃなくて、社会として国家としての、大いなる損失ではなかろうか、と思うわけです。
人手不足っていうのにさ。
やっぱり再チャレンジのための学習機会って、もっと整備した方がいいし、リタイア組の人はもっとノウハウ放出しておくれ、だし、若者も中高年も、もっともっと学んだ方がいいんですね。
てか、若い人は危機感持って学んでたりするのよ。
危機感ないのは中高年よ~( ̄▽ ̄;)
日本の高度成長期は、偶然の産物に過ぎない。
出口氏は、高度成長期を生きてきた方ですから、当時の企業が成功したからくりも、ちゃんと分析されてます。
つまり「高度成長」「人口増」「キャッチアップ型工場モデル」だそうで。
日本は1945年に敗戦して、どん底に落ちて、そこからもう這い上がるしかない状況だったわけですから、「高度成長」「人口増」がついてきたわけですね。
「キャッチアップ型工場モデル」って、要するにアメリカのマネをしとけばいいっていう、日本お得意のパクリ戦法ですかね。
だから当時の企業は、学生をじゃんじゃん青田買いして投入しても、成功できたわけだし。
下手に賢い奴より、黙って言うことをきく兵隊の方がよかったし。
年功序列で従業員の人生を守るだけの、事業成長が見込めたし。
そういう社会主義体制みたいな状況を、企業がつくれた時代だった、ということだそうです。
この辺の昭和史の部分は、読んでてすごく面白かったです。
自分の知らない(生まれていてもよく理解できていない)昭和史って、冷静に読むと、別次元の世界みたいで面白いです。
少なくとも、もうあんな奇跡の時代は来ない。
日本がまた地獄を見たとしても、工業製品の時代じゃないから、無理ですね。
院卒の時代が来てる。
先日、下の子の第一志望高校の見学に行ったときも言われたんですが、世界は院卒の時代だそうですね。
大学全入時代と言われて久しいですが、時代は院卒。
出口氏も、もっと勉強して教養を身につけることを、言われています。
学校の勉強なんて役に立たないって、そういう中高年は結構いますよね。
甘い。
教養がないとセンスは身につかないし、いい仕事もできないんだよう。
なんて、私もエラそうなことを言える立場じゃありません。
社外の人と話をするときなど、自分の記憶の引き出しを総ざらえしてもついていけなくて、「不勉強なので~」の枕詞を多用する有様です(~_~;)
う~ん、がんばるぞ~!
グローバル化の時代、今さら鎖国するわけにはいかないので、世界レベルの教養はもちろん、売り物にできるような専門知識・思考力も必要です。
だから、大学院なんですね。
まあ、日本の大学・大学院のもろもろ裏事情が見えてくると、それで大丈夫? ってのもあるんですが。
そんなんやってる間に、優秀な学生をどんどん外国の大学に取られて、日本は魅力のないつまんない国になってしまうよ~、ということです。
まあだいたい、トップの器以上の組織ってできないそうですからね。
企業と大学・大学院のトップ、文科省と国のトップの器が、今後の日本の教育現場でも問われるわけです。
やっぱり文章は、書いた人間の立場から逃れられない。
この本の内容には、賛同できる部分が多いんですが、できかねる部分として「消費税は公平な税制」と仰られている箇所があります。
いや、不公平でしょう。
出口氏は「20代の平均所得は、共働きで300万円ちょっと」と言いつつ、「所得税に頼ると、どうしても働き盛りの若い世代に負担が重くのしかかる」と言います。
いや、働き盛りの若い世代が、高所得とは限らないんですってば。
月収50万で税金30万円の場合と10万円の場合で、教育費や医療費を全額支給する場合と低額至急の場合……みたいな仮説も立ててらっしゃいますけど、それって年収600万以上の人の話ですよね。
夫婦で年収300万じゃ、月収はふたりで25万(ボーナスなし)なんですけど。
税金30万なんてそもそも出せないから、累進課税の方が公平なんですけど。
大企業に入れなかった場合、中小企業のしかも非正規労働者だったりすると、死ぬまで年収200万未満だったりするんですけど。
やっぱり、大企業目線の人なんだなあというのは、思ってしまいました。
私、結婚してたときだって、年収600万になったことないぞ(元夫と合わせても)。
うちみたいなケースが、例外的だったらいいんですけどね。
医療費・教育費・住宅費が仮に全額支給されたとしても、月収すべてが税金に取られた上、足りない分がツケに回っていくんじゃ、生活できませんね。
ああ、そこで出てくるのか、無償労働で支払うという兵役が……。
「働き方の教科書」は現代の社会問題を考える教科書だった。
ということで、私は「働き方」というより「現代の社会問題」を考えるテキストとして読みました。
でも若い人には、仕事の参考になることが、たくさん見つかると思います。
同じ仕事をするなら、当たり前ですけど早い方がいいし、相手のことを考えた気配りができた方がいい。
部下を持てば、一兵卒と同じ仕事をしていてはいけないし、人を動かすことの難しさから逃げるわけにはいかなくなる。
そりゃ、指示待ちくんでいいバイトの方が、ラクですよ。
つまんないですけどね。
出口氏は高度経済成長期の人なので、ちょっと感覚古い? と思ってしまう部分もあります。
若い人は、上司にご飯をおごってもらうとか、あんまり好きじゃないかもしれません。
飲みに行くより、勉強会に行きたい、という意見を聞いたこともあります。
だからまあ、そこんところは流しておいて。
でも、休憩時間にたまにドリンクおごるとか、そういう気づかいのできる人は人望集めるよって、おばちゃんたちは言ってます。
ぎすぎすした世の中なので、仕事で行き詰っても、相談できる人がいないとか、ありますよね。
直接会ったことのない人でも、こういう本を介して、生き方を知ることはできます。
すべてを肯定できなくても、いいなと思う部分だけ真似すればいいし。
この記事も、何かのお役に立ちましたら幸いです。
ありがとうございました。m(_ _)m