『予告された殺人の記録』を人生初読して感じたこと。
ほんのよこみちです。
ガブリエル・ガルシア=マルケスの『予告された殺人の記録』を読みました!
遅ればせながら、人生初でございます。
この本が日本で出版された1983年は、私は中学生で、文庫本が出た1997年11月は、上の子を出産した直後でした。
海外文学はSFしか眼中になかった中坊と、産後で全然読書なんかできなかった母親では、ちょっとめぐり合えなくても仕方なかったかもですね~。
本は、自分が手に取ったときが旬です。
2019年最後に読んだ、良書でした!
構成力がすごい!
冒頭から、殺される男として登場するのが、サンティアゴ・ナサール。
彼がなぜ殺されるのか。
そのことを、田舎町の住民たちがどうやら知っているらしい、それはなぜか。
それらの謎を「わたし」という主人公が聞き取りをしながら、 様々な色の糸で繰り返し織りあげてゆく重厚な布……。
この小説は、1951年に起こった事件をもとにして書かれているということですが、とにかく構成力がすごいと思いました。
時系列があちこちに飛んだり、前後したりするんですが、それは聞き取った住民主体で話が進むからで、でもその住民目線そのものも平坦ではなく、通りすがりの住民を巻き込んで、新たな登場人物をどんどん増やしながら、物語世界を構築していきます。
そしてその、一見わかりにくそうな話の進め方が、わかりにくいどころか、すごく面白くて。
この複雑な物語を書ききる文章力って、ホントすごいですね!
女性の人権がない……(ネタバレあり)
ちょっと前の男性作家の小説を読むと、だいたい腹が立つんですけど、女性の人権が全くないんですよね。
そういう時代だったということで、もうしょうがないってわかるんですけど。
この小説でも、女性の人権は無いも同然です。
ネタバレになっちゃいますけど、女は耐えて当然とか、処女性がなければ価値がないとか、あほちゃうんか?
それでいて、男が売春宿に入り浸るのは青春の1ページみたいな感じで、もう、はあっ? ですよ(#^ω^)
時代性というと、この話の元ネタ事件の頃も書かれた時期も、ガルシア=マルケスの母国・コロンビアは暴力や軍事政権の時代だったようですね。
力の時代だと、やっぱり女性の地位って低下すんのかなあ、とか思ったり。
女系家族社会でもあるそうですけど、それって国内が安定しないゆえのものでは? という気がしないでもないですし。
読んでて、コロンビアの歴史や文化とか、世界的な女系社会の違いとか、そういうのをもっと知りたくなりました。
知らないことがあるって、わくわくしますね。
細部が気になる!
とにかく登場人物の多い小説ですから、各キャラクターについての細かな部分などで、気になる部分が結構出てきます。
アンヘラ・ビカリオのお母さんって、なんでこんなに名前がたくさんあるの? とか。
スペイン系の人って、名前がすごく長くなるから、そんなんですかね?
あと、サンティアゴ・ナサールのお父さん、イブライム・ナサール。
アラブ人カトリック教徒がカリブに移住って、結構な物語じゃないですか?
ちょっとそっちも興味あるんですけど!
他にも、出てくるキャラクターがみんな息をしているので、そのひとりひとりで物語が書けそうで、ツッコみ出したらきりがないくらいです。
バヤルド・サン・ロマンって最低だと思うけど、このくそプライドの高い男のヘタレ具合も、ちょっと気になります。
何度でも読んで、解説本とか二次創作本とかを書きたくなるテクストですね。
ということで。
この本は、小説として本当に面白かったです。
女性の人権のなさには、腹が立ちましたけどね。
ただ、こういう文章はもっともっと読みたいです。
今まで何年間か、小説を読むのが辛い時期がありましたが、こんなに面白かったんだ~と再認識できました。
2020年は、文学をもっともっと読みたいです。
小説も、詩も、哲学も、歴史も、読みたい。
読んで、得たことを書いて記事にして、自分がもっと別の何かを書けるように、向上していきたいと思います。
ここまでお読みいただきまして、ありがとうございました。
2020年もよろしくお願いいたします。m(_ _)m