ほんのよこみち なブログ

元不登校の高校生と、ひきこもり→就労準備中の子を持つシングルマザーが、このくにで生きることを考えながら、本と好きなことを語ります。

『て、 わた し 第3号』を読んで考える、歴史を背負うという生き方。

ほんのよこみちです。

最近、こればっかり読んでいる気もしますが、修行中の身なので、まあお付き合いくださいm(_ _)m

『て、わた し第3号』を読みました。

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この本の中で、まず面白い!と思ったのが、大島健夫さんの「こんな悲しい日に」。

何が面白いって、

 

こんな悲しい日にね

うんこが出たの(本文より)

 

というような文章から始まる詩が、面白くないわけないじゃないですか!

双子のライオン堂さんで読ませていただいて、もうこの詩がちゃんと読みたくて、この本を買ったようなものですから!

(あ、まあ、なくても学習のために買ったかもしれないですけど。でも、一気買いはしなかったろうな)

 

 

そんなふうなので、同時掲載の大島さんの詩「鈴」は、個人的にはDVっぽく読めてしまうので、ちょっときつかったです。

すみません、作品に対する否定的な意見は絶対載せたくないと思っていたんですが、世の中には、文芸表現をDV容認派ととらえてしまう人もいるので。

あれはいけない、これはいけない、と口うるさく言うつもりは毛頭ないんですけど。

でも、言っているふうにしか見えませんよね。うちの子たちにも言われました。

だから、個人的にDVを連想させてしまう表現は、すみません、無理です💦

 

 

そういえば、以前、気になる男性作家さんの短編集を図書館で借りて読んでみたら、最初が同棲している彼女を殺してしまう話で、それ以後、その方の小説は読めなくなりました。

というくらい、DVは怖い。

創作と現実をごっちゃにするなって、子どもにも言われてるんですけどね。

創作と現実が地続きじゃなくて、何を訴えるのさ、とも思うし。

 

 

ということを、ローナ・ディー・ヴァンティズさん解説文を、訳者の山口勲さんが書かれているのを読みながらも、考えました。

 

アメリカ合衆国に住むマイノリティの詩を読んで驚かされるのは、書かれている詩の中にアメリカの歴史が投影されているように感じることです。(本文より)

 

この号の世界の詩も、リアルすぎるほどにリアルな世界の現実をうたった詩と超短編が、掲載されています。

平和な日本に生きていると、ファンタジーかと錯覚してしまうような、現実です。

その現実(作品)が背負っている歴史というのは、多分、世界の芸術家の中では「自己防衛システム」なのかもなあと、村上隆氏の『芸術起業論』を思い出しました。

 

芸術起業論 (幻冬舎文庫)

芸術起業論 (幻冬舎文庫)

 

 

世界のアート市場では、自分の作品の歴史上の立ち位置を表明する必要があるとか。

ならば、文学においても、そういう作家がいてもおかしくはないし、マイノリティだからこそ、歴史的立ち位置をあらわにしないと、理解されないという危機感があるのかもしれない、と、まあこれは個人的愚考ですが。

 

裏を返せば、日本の詩として掲載されている作品が、文学的で面白いのは、日本人にとって歴史が物語であるという認識に由来するのかもしれませんね。

……って、かなり強引な論法だと、我ながら思うのですが💦

服部真里子さんの詩も北爪満喜さんの詩も、私の頭脳の及ばないくらい、言葉遣いが好き!ということしか言えないくらい、洗練された作品でした。

 

 

生きているってどういうことなんでしょうね。

自分では国とか歴史とかを背負っている気は全然ないですけど、命は自然発生しませんから、何十億年か続いてきた誰かの怨念みたいなのは、引きずっている気がします。

その程度のモノとして、過去150年の黒歴史を「物語としてはつまらない」から封印したくなっている。

向きあうときは、なんとなく浪花節を探して、エンタメ化しようとしてる。

今、こうして文章を書く人間として、例えば「夏目漱石を経た自分」などと表明できるほど夏目作品を知り尽くしているわけでもないし。

先人たちが築いてくれた礎の上に立っているくせに、足下が何でできているかも知らない。

詩を学ぼうとすると、自分の無知さと雑な生き方を思い知らされて、本当に凹みます。

でも、凹むっていうことは、一歩前進でもあるわけで。

足下を知らずして、何の主張ぞ。

苦手であっても、生きることは団体戦なんだなと、考えた次第です。

 

 

そういえば、ヘアサロンのスタイリストさんに「詩を習いに行ってまして……」とお話したら「すごく高尚な奥の深い世界に入られましたね」とびっくりされました。

日本で育った普通の人の感覚って、そういうものなのかもしれません。

そういう感覚をも背負う、ということが、文学なのかなとちょっと思いました。

誰もひとりでは生きていけません。

多くの方の存在があってこその人生です。

そこまで思い至らせてくれた、この本に、感謝です。ありがとうございましたm(_ _)m