久々に『スカイ・クロラ』を観て思う、自分という存在のあやふやさ。
ほんのよこみちです。
TSUTAYAプレミアムに入ってしまったので、近所のTSUTAYAさんで旧作DVDをいろいろ借りて観ています。
ネット配信の時代に、なんかアナログなことやっている気がするんですがね。
ネットの見放題サービスって、子どもが観たいのがイマイチなかったり、追加料金がすごく上がりそうだったりするんですよ~。
近くのTSUTAYAさんには、以前からお世話になっていたし、お店をやり続けて欲しいので 、月1000円で旧作借り放題のサービスを利用することにしました。
で、下の子が観たいと言っていた『スカイ・クロラ』をレンタルしました。
私は、押井守監督の作品は結構好きなので、『スカイ・クロラ』も好きな作品の一つです。
ついでに言えば、原作小説も何年か前に読みました。
その状態で、あらためて映画版を観ると、印象とか認識とかのずれってあるんですよね、やはり。
ただ、映画は映画で別物だと思っていますので(表現方法が違う、ということで)、100%映画版についての感想を、しばし書かせていただきます。
わからないという不安感
戦闘機同士のドッグファイトから始まるこの作品は、雲の中をふわふわと漂うような、そんな空気に包まれています。
どういう背景で戦争をしているのか、少年兵たち数名の基地の存在は何なのか、そういったことが深く語られることもなく、戦闘という日常が描かれていきます。
キルドレとは何なのか?
彼らの上官である草薙水素はどういう人物で、なぜ彼女はいつも不機嫌そうなのか。
とにかくわからないことが多くて、草薙水素も危険そうで、観ていてはらはらしてしまいます。
でもその不安な感じが、実は後半に活きてくるんですよね~。
我々は、この世の中のことをすべてわかっているわけではないし、自分自身すら、あやふやな認識でつかまえているに過ぎない。
明日のこともわからず、今という瞬間の手ざわりしかない。
表現の仕方として、そういうことが描きたかったのかなあと、思うのでした。
孤独
この作品を覆っているのが、わからなさと不安感であれば、そこから導き出されるのが、孤独です。
主人公の函南優一は、配属された基地やその周囲で、奇妙な違和感をおぼえる。
同僚である土岐野も娼婦のフーコも、何かを知っていて隠している。
でも、自分は日常業務を淡々とこなす。淡々と日々を過ごす。
孤独ってそういうのかなあと、感じました。
函南はキルドレで、どうやらキルドレは簡単には死なないらしい。
死なない。子ども。パイロット。
函南は淡白で、感情を表に出す子ではありません。
誰にでも優しいから、フーコ、草薙、三ツ矢など、女性陣が絡んできます。
そんな函南をみていると、孤独感が伝わってくるんですよね。
この作品は、孤独感に浸りたいときに観るアニメかもしれません。
自分とは何か
物語がすすむにつれ、函南たちは戦争を請け負う企業の社員として戦争をしている、ということがわかってきます。
自分とは何か。
キルドレたちの不安が、実は草薙水素に凝縮されているような気さえ、してきます。
兵士として生きるということ。
兵士以外の自分が希薄な、この人生はなんなのかということ。
終わらない戦争。茶番劇のような戦争。
死ぬとはどういうことか。
それでも命令が下れば出撃するわけで。
空を飛ぶこと自体は、パイロットたちは好きなわけで。
この矛盾とわからなさ、あいまいさ、やるせなさが、人間だなって思ってしまうのです。
キルドレじゃなくとも、年を取れば、子どもの頃の記憶なんてあいまいで。
自分の小さい頃を知っている人も、どんどんいなくなって。
今という瞬間の自分しかない、そんなふうにも思えてしまいます。
そんなあやふやさに浸りたいとき、このアニメは浸らせてくれます。
日常に疲れたときに見るアニメ
この作品は戦争モノではありますが、スカッとするような軽いエンタメ作品とはちょっと違う気がします。
日常に疲れたとき、じっと心の内側に向き合いたいときに、その辛さを共有してくれるような作品です。
というか、私はそういう見方をしました。絶望読書みたいなもんですね。
うちの子は結局、前半のドックファイトのシーンで酔ってしまい、途中までしか見れなかったんですが。
そういう人もいると思います。
私は、すごく疲れたときにこのアニメを観て、原作を読んで、草薙水素とは違う自分自身のふがいなさと向き合い、他のいろんな作品の力も借りながら、浮上する、というのをやりました。
絢香さんの「今夜も星に抱かれて……」を聴くと、今でも涙が出そうになります。
この作品は好きなので、やっぱり宣伝したいんです。
人生、なんやかんやあって、どうにかしたくても八方塞がりで、挑戦したら袋小路で……っていうこと、ありますよね。
まわりの人が信じられなくなったり、悪意しか感じられなくなったり。
そういうときにそっと寄り添ってくれたのが『スカイ・クロラ』でした。
大好きです。
この作品に携わられたすべての方に感謝をこめて。
これからも、誰かの心に寄り添う作品でありますように。