昨今の東アジア情勢を考えたくて『歴史戦と思想戦――歴史問題の読み解き方』を読む。
ほんのよこみちです。
昨今の、なんかもうぐだぐだな東アジア情勢を考えたくて、読みました。
『歴史戦と思想戦―—歴史問題の読み解き方』です。
いやあ、すごく良かったです!
ここ数年の、この怪しげな外交情勢とかの根本が、すごく丁寧に書かれていて、腑に落ちた感じがしました。
私自身は、日本という国が好きだし、やっぱり愛着あるし、だからこそ格好いい国であってほしいと思うんですね。
そんな中で、現代のこのまずい空気感は何なのか。
この本で紹介されている、エーリッヒ・フロムという人の『自由からの逃走』からの抜粋が、非常に象徴的だと思いました。
自由は近代人に独立と合理性をあたえたが、一方個人を孤独におとしいれ、そのため個人を不安な無力なものにした。
この孤独はたえがたいものである。
かれは自由の重荷から逃れて、新しい依存と従属を求めるか、あるいは人間の独自性と個性とにもとづいた、積極的な自由の完全な 実現に進むかの二者択一に迫られる。
上の文章は、ドイツの人々がなぜナチスを支持していったのか、そのことについて書いてあるものなんですが。
驚くほど、1930年前後の日本に通じるものがあると思います。
そして、現代の我々にも。
親世代の常識が通用しなくなって、ある意味自由で、その代わりに、先の見えない不安を常に抱え込んでいる、現代日本人。
自由に好きな仕事を選びなさい、なんて言われても、どうしていいかわからず、とりあえず就職活動に乗り遅れまいと右往左往するんだけど、自分のやっていることが正解かどうかわからなくて。
自由は不安の裏返し。
そこから逃れようとすれば、絶対的権力者にすがって、従属支配されることからくる安寧を求めてしまう。
結果、ファシズムへの道を転がり落ちる。
納得ですね。
世の中には、ラクしてうまい汁を吸いたい人間が、とても多いです。
我こそは権力者の側にいて、大多数の犠牲の上に、安穏と座っていたい、というような輩が。
権力は、集中してこそ奪いがいがある、というもの。
そのためには、無茶苦茶な論法も平気でやるし、都合の悪いことは隠すし、格好悪いこともじゃんじゃんやる。
あ、私から見た「格好悪いこと」ですけどね。
そういう亡霊みたいな連中に取り込まれる、人の良い若者たちが結構いるので、この本はとても大事な本だと思います。
私はどんな若者も犠牲になっていいとは思わないので、今のまま、近隣諸国と戦争に突き進むような未来は、なんとしても避けなきゃいけないと思っています。
日本に住む人たちが大切なら、戦争は利口な選択肢じゃないですよね~。
勝てないから。
現役世代がどんどん減っていて、軍人のなり手が少なくて。
経済も停滞していて、戦争する金を捻出するなら、消費税をどんどん上げるしかなくて。
社会インフラを回す人出にも事欠くようになって。
資源もなくて、石油もなくて。
第二次世界大戦の敵国条項も残ってて、味方になってくれる国もないような状態で。
誰が戦争して勝てると思う?
もっとクールにいきましょうよ。
もっとかっこよくいきましょうよ。
ひらたく言えば、この本はそういうことを訴えている本だと思います。
って、意訳しすぎ?
現在の、慰安婦問題と南京虐殺問題について、なぜもめるのか、なぜ真相がはっきりしないのか、実際のところどうなのか、そういうことをものすごく調べて書かれた本です。
産経新聞が好きな人も、リベラルな人も、ぜひ読んでほしいですね。
この本を読んで、なんでリベラルがネットでサヨクとか言われるのかも、わかりました。
納得。
この本が、今現在、手に入るということは、まだまだ日本も捨てたもんじゃありません。
てか、諫言を封じられるようになったら、その国はおわり……って中国史じゃ定番になってるんだけどなあ。
え? 現代中国は? って?
アメとムチを使い分けてるだけでしょ?
私は『動物農場』みたいな生活はしたくないので、この国がもっと住みやすい社会になるように、もっとなんかやりたいのが正直なところなんですが。
とりあえず、この本はおすすめしたいと思います。