ほんのよこみち なブログ

元不登校の高校生と、ひきこもり→就労準備中の子を持つシングルマザーが、このくにで生きることを考えながら、本と好きなことを語ります。

『ケーキの切れない非行少年たち』を読んで考える、自分と他者とのどうにもならない相違と、達成感ある幸せ。

 ほんのよこみちです。

話題の新書『ケーキの切れない非行少年たち』を読みました。

 

ケーキの切れない非行少年たち (新潮新書)

ケーキの切れない非行少年たち (新潮新書)

 

 

自分の見ている世界がスタンダードとは限らない。

タイトルにある、ケーキを三等分できない少年というのは、結構衝撃的ですよね。

他にも、図形を描きうつすこと、簡単な計算、漢字を読んだり、短い文章を復唱することなどができない、認知機能に障害のある少年たちが一定数いて、そういう少年たちが非行に走り、犯罪者となっている現実を、この本は教えてくれます。

 

我々は、自分の見ている世界が普通だと思っています。

自分の認識したものが普通で、それと違う認識の相手については、違和感や、時には怒りをおぼえたりもします。

でも、自分の認識が普通ではなくて、他者の言葉が理解できなくて、わからないから莫迦にされたり差別されたりしたら、それでも心を閉ざさずにいられるだろうか。

 

実は、他者の見ている世界が見えなくて途方に暮れるという経験を、私は何度かやらかしています。

詩人の方たちには見えている言葉の世界が、さっぱりわからなかったとき。

詩人の方の講座やイベントに行ったとき、他の生徒さんたちはわかっている言葉が、私は全然理解できなくて、どうしていいかわからないという状況に陥ったことがありました。

他にも、若い方の常識がわからないとか、バリバリ仕事をし続けてきた方たちの一般教養を知らないとか。

もともとの知能レベルなのか、おかん歴22年の間に老化したからなのか。

それを自己責任と言われれば返す言葉もないんですけど、でも自分が言われたらつらいですよね。

ましてやそれが弱い子どもたちであれば。

 

適切な支援や教育を受けることができないまま、大人になって途方に暮れている誰かとは、天才たちのコミュニティに放り込まれた自分。

 

なんでわからないの? 

わからないものは、わからないんだよ。

理由なんてないよ。わからないんだから。

 

他者を莫迦にするというのは、とても冷たい行為ですね。

わかるように導くというのが、人間として取るべき行動なんですね。

 

人としての幸せは、達成感の向こう側にある。

 この本では認知機能に障害のある子どもたちについて、その想像力の弱さも指摘しています。

想像力が弱いから、未来を見通して目標を立てることができない。

目標が立てられないから、努力をしない。

努力をしないから、成功体験や達成感を得られず、自信が持てず、自己評価が低い状況から抜け出せない。

 

これ、結構耳が痛いです。

私も目標を立てるのが苦手で、つい目標がノルマを掲げることになってしまうので、疲弊してなし崩しに終わってしまうという……。

毎日ブログ更新するぞ! とか言ってみても、仕事と母ちゃん業やってたら無理じゃんって、どこかで思ってる。だから、できない。

できないから、余計に自分自身を見失ってしまうんですね。

 

また、著者の宮口氏は、褒める教育は問題解決にならない、と仰います。

つまり、現状のできていることをいくら褒めても、本人が抱えている悩みは、何も解決しないということですね。

勉強がわからなくて悩んでいる子に、でも君は走るのが早いよって言ってって、今それは関係ないから! っていうやつですね。

 

褒めるという行為は、結局は過去を見ていることになります。

人が悩んだり苦しんだりしているときに、今が過去を見て癒されたいときであれば、これだけ頑張ったんだと、自分を褒めることも必要でしょう。

ただ、それではどうにもならない、未来を見て落ち込んでいるときは、努力するための手助けが必要……ということですね。

努力して、難問を解決したときの達成感は、自己評価の向上につながります。

幸せは、そこにあるんじゃないでしょうか。

 

だから、やっぱり目標を立てて努力するって、大事なんですね。

もちろん、立てた目標が達成不可能な場合もあります。

誰もが五輪で金メダル取れるわけじゃないし。

他者との相対評価とか、数値目標とかだと、どんなに頑張っても無理……という状況は発生しがちです。

結局は、自分で、自分の能力と向き合いながら、頑張れば達成できそうなレベルの目標を、自分に課す。

どういう自分になりたいか、どういう自分でありたいかを、目標にする。

努力する。し続ける。

その先に、幸せがあるんですね。

 

まとめ

この本の著者・宮口幸治氏は、医療少年院で非行・犯罪を行った少年(少女)たちを指導されている方です。

私の尊敬する岡本茂樹先生の理論の不備を指摘し、岡本先生の理論では救えなかった子たちを救おうとなさっている方です。

この本を読み始めたときは、完全に子どもを守る大人の視点でした。

でも途中から、自分の認識力を疑い出し、自分の知能だってたいしたことないじゃないかと思い始めました。

結局、人間ってその程度なのかもしれません。

だから、自分でも努力するし、他者をいたわる必要があるし、誰も排除せずにすむ社会にしなきゃいけないんだと思います。

この本は、そういうことを考えさせてくれる本です。

この本を読んだことで、もっと優しい人間になりたいと思いました。

その方が、格好いいから。

格好いい人のあふれる世の中でありますように。

 

ありがとうございました。m(_ _)m

 

ケーキの切れない非行少年たち (新潮新書)

ケーキの切れない非行少年たち (新潮新書)